花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (48)

長いものに巻かれない

それは最初から長いものではなかった。
少し伸びては、剪定され、そういうことが社会の品位でもあった。

いつのころからか、人々はイメージで語り出し、
足元の現実をよそに、ひたすら垂れ流される映像で毒された。
少数の意見は、いつの間にか「大義」を掲げるデマゴギーにかき消され、
本当に何が大事なのかを伝える役目の人間は、世間の風当たりを恐れて、
沈黙してしまった。

いつしかみんなの口から、同じ言葉が出るようになり、
人間の「脳」力は枯渇して、同じ言葉しか出なくなった。

自分の意見の正しさを、多数決でしか判断できなくなった社会には、
より大きな声、より多くの声、より簡単なフレーズを好むようになった。

「血を流せ」といった人間は、いつのまにか吸血鬼のような役割を演じ、
「変わること」を喧伝した人間は、思考の旧態依然から脱却できない。

結局は、何かを「変える」ことは、何かを「変えたい」という大きな意思に屈服し、
その尻馬に乗って、駆け抜けただけであった。
一方で、自己保身は担保した上で、社会に「痛み」を求めた。

かくて、今のどうしようもない政治体制が、どうやっても変えられないような
硬直性と、破滅への定向進化(むしろ退化)に突き進んでいる。

以上、小選挙区制度が導入された、簡明なる記述である。


第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。