花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伊坂幸太郎 『オーデュボンの祈り』

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先日の『ゴールデン・スランバー』の勢いを買って購入。
伊坂幸太郎のデビュー作。

仙台から海で離れた「萩島」を舞台に、
衝動的にしでかしたコンビニ強盗から逃れるように降り立った主人公と、
島から離れずに生を全(まっと)うする島民の信仰とも洗脳とも思えない
社会風土に戸惑いながら、寓話的で、神がかり的で、そして輪廻を感じる
ようなストーリー。

デビュー作より、ストーリー展開の独自性があり、面白い。
人間が持つ、残酷な部分をおよそ3つのステージに分け、
そこが最後は不思議につながって行く。

「この名探偵というのは何のためにいるか、知ってる?私たちのためよ。物語の外に
いる私たちを救うためにいるのよ。馬鹿らしい」(133ページ)
主人公の元彼女の台詞だが、実は伊坂自身が思っているのでは、と感じる。
それが、最後になってある種のキーワードとなって出てくるところを見ると
結構な野心家だなあ、とも感じた。
野心のある作品もいいものだ。若くてね。