花鳥風月記

流れる水に文字を書く

池内了 『疑似科学入門』

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巷間に溢れる「ニセモノ」の科学や、
それを利用した悪徳商法やまやかしについて
三種に分類して、「疑似科学」を論じている。

第一種:人間の心理につけこむもの。占い・超能力・超科学など。
第二種:科学を援用・乱用・悪用し、ビジネス(悪徳商法)につなげるもの。
第三種:科学では解明しえない「複雑系」を盾にグレーゾーンを利用して、
自分の立場にいいように利用するもの。

この本では、人間の批判的なものの見方が、最近とみに減っていることも警告している。
また、「思考停止は疑似科学の入口なのである(139ページ)」のように人間が考える力すら、
衰えていることも危惧し、教育の場面で、「疑うこと」の大切さを教えるよう提言している。

疑似科学(もしくは似非科学)については、古くから新聞・雑誌・メディアにはびこり、
そのたびに市井の人間は惑わされている。ホンモノの学者の包括的な批判は、
実際に少ないのが現状で、本書でも同じ記述があったが、
そこが科学者の社会的役割を見つめるべき課題でもあるような気がする。

また、地震についての「予報」「予知」「予測」という言葉について、
疑似科学へつながる陥穽を指摘しているが(152ページ)、
実は本書で使われる「疑似科学」に対置することばで
「真正科学」の方が、よっぽど胡散臭い。
これは、「真正」と使わず、「科学」と「疑似科学」で対置した方が、
ウソははっきりと現れる。

案外、科学者が目の前のものに囚われやすいことに気づくには、
皮肉な結論だが、この言葉遣いは示唆に富む。