花鳥風月記

流れる水に文字を書く

愚短想(93) ウサギ追いし川崎

かれこれ13年くらい前のこと。
社会人になって3年目くらいだったか、
ひょんなことから、ウサギを拾ってきたのがいた。

どうやって拾うんだ、とおもったが、そこは川崎。
「自然をこよなく愛する人」は意外とペットも養っている。
その中で、ウサギを飼ってた人もいたのだろう。
ピーターラビットのような2色の毛並みで結構かわいかった。
鼻先に少しケガがあった。

ウサギは何を食うんだ?というところから始まり、
仕事の合間にまさにウサギ小屋を作成。
水は直接飲まない、という話だったので、
コンビニからサラダを買って与える。

そのウサギは人に慣れた、というか人に対する依存心が強すぎ、
ちょっと外で運動させようとしても、頑として動かない。
少しでも脅かして動かそうとすると、ジョーッと反撃。始末に困る。

3日間くらいは、職場に居ただろうか。
このままでは埒があかないので、貰い手を捜す。
今となってはこのバイタリティは何?と思うのだが、
ウサギといえば小学校、ということで、
電話帳にある小学校を片っ端から探して電話をする。
20校くらい断られただろうか。ようやく引き取り手が見つかる。

教頭先生の話では、ウサギは家庭で飼っていても、
育てきれずに捨てる人もいるらしい。
多摩川辺りには結構そういったことがあるそうで、
意外にも、ネコに食べられてしまうこともあるようだ。

もっとも、ウサギの中にも、逞しいのがいて、以前読んだ新聞記事では、
野良ウサギが、巣穴を掘って、土手の強度が下がっているところもある。

ワゴン車にウサギ小屋ごと積んで、小学校へ。
玄関で、教頭先生が待ち構えていた。
ウサギはといえば、天井が急に低くなり、
手荒い自分の運転に恐れをなしたのか、
ジョーッとやってしまった。
引渡しの時には、放心状態で前足がダラーンとして
まあ、それはそれでかわいらしかった。