花鳥風月記

流れる水に文字を書く

歩いても歩いても

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シネカノン有楽町1丁目にて。

長男の命日に、長女・次男家族が法事にやってくる2日間を描いた。
実家を二世帯住宅にしようと案じている長女。
優秀な兄に引け目を感じ、失業中で子連れ再婚という居心地悪い次男。
家族全員がどことなくぎこちなく、それでいて自然な話が飛び交う。

どこの家庭にもありそうな、一家族の風景でありながらも、
心に沁みるのは、きっと「忘れてはいけない」何かを感じさせるからだろう。

題名は、長女家族が帰って、ちょっと空気の重い夕食の際に、
母親(樹木希林)が想い出の曲としてレコードを持ってきた
いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」の歌詞による。
このサイドストーリーにも、チクリとさせるものを潜ませている。
要するに、全てが何か関わりがあって、終わることのない対話が流れてゆく。
それは決して何かを遂げることなく、時間だけが進んでゆく…。

伝えたいこと・約束、それはいつも一歩ずれて手遅れとなる。
けれど守れなかったことが悔やむ想いというよりも、
「心残り」という柔らかな疵のようなものでしかない。
そんな日常を饒舌に物語っていたように思えた。