花鳥風月記

流れる水に文字を書く

アトミックサンシャインの中へ

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代官山ヒルサイドフォーラムにて。
副題は「日本国憲法下における戦後美術」で、
特に第九条を意識した内容になっている。

大判なカラー印刷が折りこまれたカタログの詳細な講釈はこの際放っておいて、
率直な印象を書いてみたい。

まず、下道基行の鳥居の写真について。
“現在の日本の国境線の外側に残された鳥居”とある。
太平洋戦争という傷を負って得られた日本国憲法は、
60年以上経ち、様々なことが言われつつも、
まだ風化しないモノとして視覚的に残っている。
それが路地をまたぐように、木々の中に埋もれたり、
倒されて住民の憩いの場となっても、人々の記憶の中には生きるだろう。
日本にいて、建物がどんどん替わっても忘れ去られない。

柳幸典の「バンザイ・コーナー」は初代ウルトラマンウルトラセブン
人形が二面鏡の間に配列され、遠景では日の丸を現す。
どことなく戦争が忘れ去られた60余年間と、その間に流行った
好戦的な国民志向がシニカルに表現されている。

森村泰昌の「なにものかへのレクイエム」は三島由紀夫へのオマージュ。
「いいか、ようく聴け」と言い放った先には誰もいない。
それでも嬉々として演説をぶち、最後は「バンザイ」と叫ぶ。
狂気のカタストロフィーがそこに垣間見られる。
しかしながら、それは平和憲法という状況下で逆に安穏としてしまった
時代への皮肉にも見える。

その手前には、エリック・ヴァン・ホーヴの「日本国憲法みみずのアウトダフェ」
というインスタレーションがあった。
まあ、インスタレーションは理解に努力を要する場合があるが、
これは、長さ2メートルの木箱の中に6万匹のミミズをいれ、
日本国憲法の英文(なぜか9条は除く)をいれ捕食させる仕組みになっている。
食べるときの「プチ、プチ」という音が、火が弾けるような音をイメージし、
宗教での異端査問で火あぶりにされたような世界を想起させる仕掛けになっている。
残念ながら、用意されたヘッドフォンからは、音は聞こえなかった。
また、すぐそばで、ひたすら森村の「がなり声」の映像がずーっと流れていたので、
集中して聞けなかった。展示のポジションをもうちょっと考えろよ、と思った。

オノ・ヨーコのチェスのセットは、見た瞬間に「イマジン」がアタマの中に響いた。

最後のヴァネッサ・アルベリーの展示「あなたの恐怖、私の希望(東京)」は、
見る人も参加しろ、との事なので、展示していた封筒を持ち帰る。
雨になったら、封筒を開けてみよう。

ヒルサイドフォーラムの展示は決して広いわけではないが、
今回は内容の濃い展示会だった。