花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ロストロポーヴィチ 人生の祭典

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渋谷のイメージフォーラムにて『ロストロポーヴィチ 人生の祭典』を観る。
イメージフォーラムは「箱」としてはまずまずですが、席の前後の間隔が狭めなのと、
空調が今ひとつだった。少し蒸した中でみたこの映画については、予備知識がなかった。
但し、最近知った事として、世界的に有名なチェリストであること、
旧ソ連で反体制作家ソルジェニーツィンを擁護し、政府の監視下にあり
やがて、国外に亡命を余儀なくされながらも、自分の意思を貫きとおす人柄であること。
また、1991年のクーデター騒ぎの中、いちはやくエリツィンを支持した、ことなどを知るようになる。
映画の冒頭で、金婚式のシーンがあり、かれの席の近くにはエリツィンがいた。
また、ヨーロッパ各国の王室や日本の皇室にも知己があり、音楽を志す若者やプロの人間からも
羨望と尊敬を抱かれる存在であったことが描かれていた。
ある人物の半生記のドキュメンタリーは、話に起伏がなく、退屈することがあるが、今回は、
インタビューや金婚式、ウィーン・フィルの練習風景、など様々な場面の展開をして、飽きさせない
工夫もあった。
監督のアレクサンドル・ソクーロフもわりと深く(意地悪く?)突っ込んだ質問もし、
それを当意即妙にこたえる様子も面白い。
この映画は主人公にロストロポーヴィチと全く対等に妻のガリーナ・ヴィシネフスカヤに焦点を
当てている。ソプラノ歌手としてはエリートでなかったものの、素質だけで、世界的に有名になった
人間力にも興味があったのかもしれない。実際、彼女の過去のフィルムはでてきたが、
観ている人間を圧倒させたのは、歌のレッスンをつけているシーンで、
カメラはあくまでガリーナを追う。それはまるで彼女が歌っているような錯覚に陥らせる。
これも「コラージュ」という手法なのか…。
ロストロポーヴィチエリツィンもつい先日、亡くなってしまった。
タイミングとしては、最も早い「歴史記録」映画にもなってしまった感がある。