花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ベルサイユの子

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銀座のシネスイッチにて。

フランス映画特有の、含意を先取りしなければならない
映画のナラティブ(文体)に慣れなければならない。

ストーリーは、わりとシンプルで、社会に放擲された若者と
その子どもがたどる数奇な運命を物語っている。

ベルサイユという世界にも知られた豪奢な宮殿の森で、
ひたすら明日の糧すら分からず、彷徨い生きる人々の姿がある。
彷徨うことに、社会の冷たい視線と仕打ちが待っている。
その運命を呪い・諦め・這い出したいという想いが交差する。
その悩みの象徴が、主人公の少年の存在なのだろう。

自暴自棄になり、みずからの「いのち」を得てして粗末にしているところを、
子どもという存在が「慈しみ」に変えてゆく。
「今まで」を取り囲む一つ一つに何かが見え、
そして「選び」、「去ってゆく」。

いかにもフランス映画だなあ、と思った。
夭折の俳優の遺作でもあるようだ。

主人公の子どもが人形のようにかわいかった。