花鳥風月記

流れる水に文字を書く

内田樹 『街場の教育論』

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大学院での講義録を元にした教育論。

内田の文章は極めて明快で分かりやすい。
まさに語るように書く。(まあ、講義録でもあるし…)

教育の現場にいる人間として、単なる「批判だけの批判」ではなく、
現場の人間に元気が出るような話を進めてゆく。
けっして、机上にとらわれず、「世間知」というのも題材にして話す。

時には、絶対に譲れない考えを示している。

教育活動のコンテンツは「教育商品」であり、教師はその商品のサプライヤーであり、
保護者や生徒は顧客である、と。そういうモデルで教育を語る人間がおります。
でも、私はこれは絶対に教育者が口にしてはならない言葉だと思ってます。
(本書61ページ)

恐らく、この本の底流にある時代背景は、2~3年前の安倍政権のころの
教育基本法の改正や改憲論議が出てきたあの不穏な空気があったと思う。
それが故に、いまそれが破綻して、重苦しくなっているからこそ、
この本に書かれている内容が浮き立ってくる。

教育論議マッチポンプ的な構造を明らかにし、
今の若者の個性化がいわゆる「モジュール化」「砂粒化」を生み出し、
経済構造の中にはめ込まれていることを分かりやすく講義している。

そして若者に何を語るべきか・語らせるべきか、
そこには「ことば」の多様性・重要性と
ともに考え・迷い・生きることが解決の糸口があり、
それが誰かの手による「断行」ではなく、
批判や罵声を受ける全国の「教育者」が、
その担い手であることを書いている。

非常に参考になることが多い内容だった。