花鳥風月記

流れる水に文字を書く

人生に乾杯!

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シネスイッチ銀座にて。

珍しいハンガリーの映画。

社会主義から「民主化」というか「資本主義化」された国で、
いままでの社会保障制度(年金)では物価の上昇に耐え切れなくなり、
生活に窮した老夫婦が強盗を重ねる、というストーリー。

しかし、単なる事件ではなく、高齢者への冷遇を不満とする人々の
「義憤」として評価されるようになる。
どことなくボニー&クライドのような筋立てではあるが、
そこには、いろいろなスパイスがこの映画を味付けする。

老夫婦が持つ艶っぽさが印象的だ。
人生の楽しみ方が、けっして駆け足ではなく、
長く生きてきて一つ一つをゆっくりと身につけていったことが感じられる。
おカネを得て、確かに派手にはなるものの、使い方・楽しみ方を知っている。
それが、「資本主義化」でおカネ稼ぎに齷齪(あくせく)する人間への
ささやかなアンチテーゼと化している。

また、真の「強さ」も印象に残る。
厳しい時代を生きているからこそ、「今の若いモンには…」という余裕も感じられる。
その接し方も、30年前に失った子どもを重ね合わせるように、
そして「いのち」の大切さを伝えているようだ。

くだんのボニー&クライドは、映画史でも有名だが、
嵐のような銃弾を浴びて終わったが、
この映画のラストは、誰もが口を緩めるようなものだった。
そう、鉄面皮でありながら人質になり、老夫婦に触れて心が和らいだ女刑事のように…。