花鳥風月記

流れる水に文字を書く

山田詠美 『学問』

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初めて山田詠美の本を読んだ。
今回のタイトルだが、「個人授業」や「大人の教科書」「青い時代」と書いたら、
内容バレバレ、といったものを「学問」という言葉で垣根を高くしていった。
実際それは功を奏したようで、安易な青春小説でない雰囲気を醸し出した。
性に対しての関心は高いが、それよりも「人とのつながり」が何であるかを
高いとこ・低いとこで書いている。それが、要するに少年・少女時代から
大人の一歩手前まで営々と続く「友情」というものなのだろう。

ですます調の文体は、その温度とは少し離して書いている。
登場人物は、主人公の仁美・心太・無量・千穂の4人組のものがたり。
小説の始まりは、いきなり主人公の死亡公告から発する。
後々の展開で、この子どもたちの将来、
そしてそれは、決してつぶさな経緯を知る由もないが、
書かれているとなるほどな、ということや、その後のつながりが見えてくる。

まあ、ちょっと無量の相方、素子の死因が寓話じみて?と感じたが、
そういった因縁も面白いのかな、とも思う。

男の子の性の目覚めは、よく書かれるが、女の子のそれは、なかなか出てこない。
そういった意味では挑戦的かもしれないが、展開は極めて静謐で、
かつ引き込むような文体で、あっという間に読み終えた。
夏の読書に小気味良い。