花鳥風月記

流れる水に文字を書く

佐々木 毅 『政治の精神』

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刊行は6月。いつ解散総選挙政権交代か、というタイミング。
おそらく、そのタイミングでの“一番乗り”を果たしたいという目論見が
どことなく感じられた。
特に終章の「政党政治の精神―日本政治のための覚書」は
筆者が一番書きたくてしょうがない、といった箇所かと思うが、
現在形と過去形の文体作成に苦慮している感じも見受けられた。

政治の統治体系をマキアヴェッリトクヴィルウェーバー丸山真男
福沢諭吉から論じている。
大学の教科書、といった印象で、読み終えるまでに時間を要した。
理解に時間がかかる(また、まだ理解できてないところもあるだろう)が、
3章までは、まとまって書かれてある。(もしかしたら講義録に近いのか…)

ウェーバーに関する記述では、森嶋通夫の『政治家の条件』(1991年刊)を思い出した。
経済学者ではっきり言う森嶋とは印象的に、この本では、持論があまり見受けられない。
その意味では、国際的なフィールドで活躍した学者と、日本で泰斗たる位置を確立した
筆者との違いを感じた。勿論、専門学者ならではの慎重さもあるかもしれないが。

本書は、政治学を改めて確認したい「時間のある人」には好著だろう。
しかし、不確定な時代に対しての「処方箋」を期待する人には不向きであると思った。
個人的には、現代政治の詳細な背景描写に加えて、
もっと生々しいところを、自らの「オーラル・ヒストリー」も含めて
語ってもらえる機会があれば良いと思った。