花鳥風月記

流れる水に文字を書く

バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ版

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渋谷のユーロスペースにて。
土曜日初日の翌日とあって、ほぼ満員。
殆どがきっと、一度(ならず二度?)この映画を観ていると思う。

20年前池袋で観た記憶がある。
JEVETTA STEELEの「CALLING YOU」が気に入ってサントラ盤も買った。
当時はまだ、西武セゾンの文化系が元気な頃だった。

それほど記憶に強い映画なのかもしれない。
ストーリーにスリルやサスペンスがあるわけでなく
どことなく「ほんわか」した感じなのだが、やはり引き込まれる。

ドイツからの旅行客であった主人公が、
夫婦喧嘩(これもありがちなしょうもない)が発端で
砂漠に独り取り残され、たどり着いたのが「バグダッド・カフェ
そこの女主人とその家族・家族同然の取り巻きとの
奇妙な心の交流を描く。

20年前を思い出すと、
まだソ連があり、ドイツは東西に別れ、アパルトヘイトもあった。
人種や民族の「融和」が時代的にも求められていたことは、
この映画と無関係でないかもしれない。
しかし、この映画では、ドイツ将校?の成れの果てや、
黒人にたいする誇大妄想、コーヒーの濃さなどで、
軽くかつ面白く飛び越えている。

そこには普段映画では中心とならない中年主婦の美醜を超えた友情の美しさがあり、
女主人ブレンダが流す涙を、主人公ジャスミンが滴る汗を互いに拭うことから
予感を募らせる。それが「CALLING YOU」の曲に軽やかにマッチしている。
観る人がすべて愛情を感じてしまうのは、きっとそこにあるのだろう。

20年経っても、そのシーンひとつひとつを思い出せるのは、
それほど「良いなあ」と感じたからだったと思う。
再び観てもやはり変わらず良かった。