花鳥風月記

流れる水に文字を書く

いのちの山河 ―日本の青空Ⅱ―

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新宿武蔵野館にて。
以前、この映画の撮影ボランティアを募集している、というチラシがあった。
最後の方のシーンで「ああ、これか」と思ったが、結構寒そうなシーンだった。
数々のボランティアに支えられ、完成した作品だと思った。
(エンドロールに出てくるお歴々を見ると若干身構えてしまう人もいるかもしれない)

戦後の傷が癒えつつある時代に、岩手県和賀郡沢内村という、豪雪地帯の寒村で、
交通機関の未整備・無医師・乳児死亡率の高さ・貧困といった問題を、
深澤晟雄という一人の人物が立ち上がり、教育長・助役・村長という役職につきながら、
解決してゆく半生を描写している。
1960年に全国に先駆けて老人と乳児医療無料化を実施、
1962年には、全国初となる乳児死亡ゼロを達成した。
学校の教科書では、殆ど目にすることのない、「歴史的な傑物」を扱ったことに意義がある。

実は、「日本の青空Ⅰ」を観た後に、この映画に関してはあまり評価していなかった。
クオリティの問題に加え、「わかりやすくすると、伝わりにくい」というパラドックス
感じていたからだ。
今回は、それが「先入観」であったと思う。
配役も、長谷川初範とよた真帆もしっかりしていた。
大鶴義丹や宍戸開も、「自分」をあまり出さなかったのが良く映った。
加藤剛は随分と歳をとったなあ、と思った。息子2人が共演している。
(やはり、宍戸開は、白洲次郎よりも、今回の役どころの方がずっと良い)

若干、村民同士の議論が空に浮いた感じと、
このシーンは「泣き」だと映画としては安易かなあ、と思うところもなくはないが、
最後のほうにすすり泣く観客が多かったのをみると、「成功」だったのではないかと思う。

ちなみに一般公開ではなく、各地域の自主上映がメインとなる。
しかし、新宿武蔵野館では、結構な観客が来ていて、上映回数が増え、期間も延長された。
「ぴあ」でも、11月14日公開での満足度では1位になっていた。
他の映画と違い、積極的に観に行く、という姿勢が強く出ている作品だと思った。

余談だが、帰宅後、テレビでは「ペットの殺処分ゼロを目指して」というニュースを
やっていた。映画と現代の恐ろしいほどのギャップを感じた。