花鳥風月記

流れる水に文字を書く

筑紫哲也 『若き友人たちへ』

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学校の先生でもない限り、これほどまでに若い人たち
メッセージを送る人はいないのではなかろうか。
自分が子どもの頃から、そして「若い人」の時、
そしてその年代を「卒業?」してしまってもその声は変わらなかった。
本書を読んだ時、「若い人」だった(今が老けているわけではないが)頃を
思い出した。

いや、自分も逆に「若い人」たちに伝えることに何らかの老婆心が働くのは
やはり自分も歳をとった証拠かもしれない。

本来は、書名のコラムを書きまとめたものを新書にする予定が、
本人の逝去のより、残された大学での講義録や、
著者の16歳当時の手記により構成された本。

その文面からは、若者に向かって丁寧な語り口調で、
それでいてテレビでは使わないやや厳しめで過激な言葉も織り交ぜながら
話を進めている。きっとそこで聴いた人は、面白かったに違いない。

ジャーナリストとして新聞・雑誌・テレビの世界を駆け巡り、
映画・演劇など、多彩な文化的な刺激を受け・発信する姿は、
最終的には「この国」という個人と対置した国家を憂いている。

国家財政・人口減少・教育(第十章 この国がおかれている現実を見つめる)により
国が滅びることに警告を発し、また、若者に対して、これからを生き抜く術を
アドバイスしている。(第九章 「知の三角形」という考え方)

筑紫氏の本は、以前も読んだことはあるが、単なる事実の経緯のみならず、
そこにある挿話(エピソード)をそっと忍ばせて、読み手を更に前に進めさせる
上手さがある。今回もそれが随所に現れている。

文章も話も面白い人ってなかなかいない。
筑紫哲也はそういった意味では、稀有の人物であったと思う。
専門的なことを教養的な要素から学び・体得するという方法論を私淑した。