花鳥風月記

流れる水に文字を書く

キャピタリズム マネーは踊る

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日比谷のTOHOシネマズ・シャンテにて。マイケル・ムーア監督作品。
原題は「CAPITALISM:A LOVE STORY」邦題は映画の内容から見ると失敗作か…。
マネーは踊っていない、毟(むし)り取られている。
きっと邦題の考案者は、経済的に裕福なひとなのだろう。

ストーリーは、アメリカを繁栄させ、蝕んできた資本主義の行く末を案じている。
幼い頃は、将来の安定が約束された平凡な中流家庭が、
いつの間にか401Kという企業年金マネーゲーム
大企業のデリバティブという奇妙奇天烈な金融商品による詐術、
極めつけはサブプライム・ローンという低所得者向けの強引なマネーゲームにより
人々のおカネは「毟(むし)り取られていった」。
(いやあ、毟(むし)るって字は悲壮感が切実に現れるなあ…)

レーガンやブッシュの新自由主義の時代に「規制緩和」によって
ウォール街の大手金融企業やGMなどの大手企業が暗躍し、
破綻した今や血税によって補填され、そのおカネで億単位のボーナスをもらうという
資本主義の矛盾に問題提起をしている。

今までのマイケル・ムーアの作品からみれば、ややおとなしい感じもするが、
今までよりも、より内向的な考察が入っていると感じた。
故郷のミシガン州フリントストーンでは、ローンの返済が出来ず、
持ち家を追い出され、入口を板張りにされた家屋でゴーストタウンになっている。
まさに自身が過ごしてきた半生を振り返る作品でもあるようだ。

アメリカ合衆国と対置にあるもの。
前作「シッコ」では、医療保険制度を扱い、医療が基本無料のキューバに行った。
今回は、かつて戦った国、日本とドイツなどを引き合いに出したが、
その底流にあるのは、米国民が「何に・何を憎むべきか」を
常に彷徨(さまよ)い・というか利用されてきたことも考えさせているのではないか。
最後に流れた「インターナショナル」も、そんな暗喩に感じられた。

しかし、この作品を観ると、ヘイゾウ君は一体何なのだろう、と思ってしまった。