花鳥風月記

流れる水に文字を書く

牛の鈴音

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銀座のシネパトスにて。
渋谷にするかどうか迷い、近い銀座で観ることにした。
シネパトスの構造上、仕方ないが、静かな映画に地下鉄の轟音は酷だ。
まあ、覚悟はしていたが…。

79歳と76歳の老夫婦と、15年が寿命とされるが、40年生きた仕事牛の
静かな生活を描いたドキュメンタリー。
韓国では、メジャーな映画を制して300万人を動員したらしい。

静かな映画が評価された記憶としては、「おばあちゃんの家」がある。
共通しているのは、年老いた人の限りない優しさや愛情であると思う。

農薬や機械に頼らず、具合の悪い足をひきずり・這いつくばって田畑を耕し、
子を育てたおじいさんの頑固さと、口は達者で、辛らつな口調でありながらも、
どことなくかわいらしく、愛情あふれるおばあさん。
足取りは覚束ないが、のんびり・ゆっくりと荷物を運ぶ牛。
その日常が、決して過ごしたことがないのに、意識の根底にある郷愁をさそう。

非力ながら、こつこつと積み上げる様子が見る人の心をしめつけるだろう。
雨の日によろよろと雨合羽を羽織るおじいさんの姿に涙腺を刺激され、
牛の死ぬところで、積み上げられた薪のシーンで、それが決壊しても
おかしくはない。

近代化や国際化で目を奪われた人には、良いクスリになると思う。