花鳥風月記

流れる水に文字を書く

真幸くあらば(まさきくあらば)

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渋谷のシネマアンジェリカにて。

真幸くあらば」とは、万葉集から言葉を取ったらしい。
磐代の 浜松が枝を 引き結び 真幸くあらば また還り見む
謀反の罪で刑を待つ有間皇子の想いがそこに綴られている、とのこと。

ストーリーは、遊ぶカネ欲しさに住居侵入した上、その住人を殺害した死刑囚に、
被害者の婚約者が面会を重ねることで、「禁断の愛」に陥るというもの。
被害者は別に情事を重ねた女性と殺されたことで、その婚約者の苦悩と
その死刑囚を「養母」という形で母性、そして一種の「精神の浄化」という「愛」で
向き合うようになる。
刑の執行を待つ日々と、愛しても触れることのできないその身体。
そして、聖書を使った「秘密の通信」が禁断の深まりをより濃いものにしてゆく。

尾野真千子は、ほんとうに感覚で演じているなあ、と感じる。
他の俳優とは何か違う印象を持つ。

YOU THE ROCK★って一瞬思い出せなかったが、
そういえばTV東京あたりの深夜番組に出ていたなあ、ということで思い出した。
死刑囚が、テリー伊藤ミッキー・カーチスというのも、
なんかそのまんまのイメージなのが少々残念。

この映画の準備編ともいえるプロローグは、小さな冊子にあった。
江川達也のマンガだった。
映画監督は御徒町凧音楽監督森山直太朗、製作奥山和由
なんか色々な仕掛けやこだわりがあったようだが、
そこでどんどんと己の首を絞めてゆきながら、
できることを絞り込んで作ったのは良いと思う。

しかし、なんか物足りなさを感じた。
おそらくそれは、このストーリーのカタストロフ(破局)を
意図的に避けていることではないかと想う。
それは「選択」でもあり「放棄」でもある。
なんかもう少し、と感じてしまった。