花鳥風月記

流れる水に文字を書く

インビクタス

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有楽町マリオンにある丸の内ピカデリーにて。

同時代性を共有することが、映画になる、というのも感慨深い。
勿論、その歴史のひとコマは、新聞やテレビのニュースでしか接点はない。
しかし、ネルソン・マンデラは間違いなく、同時代性のなかでの「偉人」だと思う。

個人的な思い出は、20年前に遡る。
確か北海道に行っていた。人生初のスキー体験もあったが、
丁度、投宿した先で、マンデラの釈放をテレビで見た。
1990年2月11日。隣にいた日本電波ニュース社の人が、
「単独インタビューを取りたいなあ」とつぶやいていた。

マンデラの話す英語は、聞き取りやすい。
英語があまりできない人に、いや、できない人にも分かりやすく伝わる。
美辞麗句ではない、言葉としての澄んだものが画面から伝わってきた。

今回マンデラに扮したモルガン・フーリマンも
その語り口に相当な想いを入れていたと思う。
映画では、どことなく威厳(ディグニティ)も
演じなければならなかったのかもしれないが、
実際のマンデラは、“おじいちゃんに近いおとうさん”といった印象を持つ。
しかし、国がまとまる時に求められる「国父」といった感じが良く出ていた。

ストーリーは、アパルトヘイト終結し、マンデラが大統領に就任、
白人と黒人の融合した社会へ向かう南アメリカで、
復讐や横行を警戒する白人と、
今までの抑圧のなかでつけられた傷の痛みを抱える黒人の
互いに「赦(ゆる)し合う」きっかけとして、
1995年のラグビー・ワールドカップの大会での奇跡を追った。

白人社会の精神的支柱であったラグビーチームを
「融和」の象徴として、支えたマンデラ
その期待に応えるべく主将フランソワ・ピナールが率いる
ラグビーチーム「スプリングボクス(通称ボカ)」が奇跡的な活躍で
優勝を手にするまでを感動的に作り上げている。

クリント・イーストウッド監督。
作るものにこだわる人間だからこそ、ここまで作れるのだなあ、と思った。

ジャンボジェットが軌道をそれ、決勝戦の会場を通過し、
その機体の下にボカの応援メッセージを書いていたシーンがあった。
今の時代なら、すわ、NY?と思ってしまうが、
国が良い方向へ大きく変わる時というのは、
ある意味で嬉しいハプニングもあるのだなあ、と感じた。

自分が出来ることで何かを考える、
という前向きな想いがそこにはあるからだろう。

早くも今年一番の素晴らしい映画だった。