花鳥風月記

流れる水に文字を書く

愚短想(192) オリンピック居酒屋

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いらっしゃい。お一人様ですね。こちらにどうぞ。

注文をとる前にいっておかなきゃならないのは、
ウチは「レバ」と「タラ」はありゃあせんぜ。
「もし、あのジャンプが決まレバ」とか
「もし、あの人が転倒しタラ」とかお考えのご仁は、
他に行って、せいぜい慰めあってつかぁさい。

バンクーバーオリンピックも終盤を迎え、とうとう決まりやしたね。
あっしも今までっつうと、とんと見なかったもんですが、
たまたまテレビで見ちまったら、もう釘付けになっちやぃやした。

ああいけねぇ、今日は寒くねえけど、この雨だから熱燗で宜しいっすね。
「越の寒梅」ならぬ「トリノから完敗」っていう酒が入ってまさあ。
仕込みをする杜氏がちょっと杜撰でね、「事業仕分け」っつう遣り手ババアに
どうやら財布を取られちまったらしいんすよ。
純米の生酒だったんすけど、カネがかかるっつうんで、
ろくでもねえ混ぜ物やらなんやらで質を落としてもやれってなことで…。
現場は一生懸命なんすけどねぇ。泣く泣く安い材料で仕込んだはいいが、
外国産の品の良い純米酒におされて、からもう、ジリ貧でねぇ、
今じゃこんな店の酔っ払いの慰み程度のモンしか作れなくなっちまったんすよ…。

不思議なこともあるんすねぇ。競技自体は知らねぇのに、
国母っつう選手が有名になっちまって、「ドレッド・腰ばき・うるせえ」が
妙に自分の名前に反して国粋意識を逆撫でしちまって、災難だなあ、ありゃあ…。

ああ、いけねぇいけねぇ、肝心の話だあ。
いやぁ、3人とも頑張りやしたぜ。
鈴木明子ちゃんは、見ててこっちもジーンときやした。
ほんと生き生きしてたねぇ。今、一番幸せなんだねぇ、きっと。
あれが、本来のオリンピック選手じゃないすかねえ…。

安藤美姫ちゃんも完璧でやした。
毛深えプリン「モロゾフ」の甘い誘惑が
オッサン雑誌の格好の餌食にされながらも、
自分のやることをキチンとやるとこなんざぁ、
もう、オッサン雑誌読むオッサンよりもオトナですぜ!

浅田の真央ちゃんは、ちょっと可哀想だったけど、よくやったねぇ。
北海産大マグロ「タラソワ」の味も馴染んで綺麗なジャンプでしたねぇ。
抑えられない悔しさを隠さず話す姿は可憐で健気だったねぇ。

まあ、今回は、キム・ヨナちゃんっつう一番星には、驚いたねぇ。
目を奪われるっつうのは、ああいうもんだと思いやした。

カナダのロシェットって娘も、母ちゃんを失ってつうのが、
いじましくてねぇ…。あのメダルは良かったねぇ。(ウルウル)

あっしは思うんすよねぇ。こういったモンは、ほんと運や縁じゃないかと。
その時に、どう感動を与えるか、っつうことだと思うんすよ。

荒川静香ちゃんのときもそうだったでしょ。
ほうほうの体(てい)の日本に唯一、金メダルを取った、あのトリノの時のことっすよ。

下馬評も注目も高くなかったけど、あの「誰も見てはならぬ」の調べにのった
イナバウアーをみて、みんなジーン、としやしたよねぇ。
あっしなんかも朝5時くらいに生でテレビ見て、ウルウルしやしたよ。

あん時は、もっと実力者がいたんすけど、みんなコケちまってねぇ。
そういう意味じゃ、今回は、みんな上手に滑ってて、凄かったよ。

だから今回は「天の配剤」っつうことでいいんじゃないかとねぇ。

きっと、マスコミのご仁は、あの氷面がどうとか、
いろいろと話題をけしかけて、ぎゃあぎゃあ騒ぐんでしょうが、
そんな騒音みてえなモンはほっといて、
みんなでしんみりとクッといきやしょうよ。

あ、お客さん、腹減ってるの?
すみませんねぇ、うちは「オリンピック居酒屋」でも
「お子サマランチ」はやってねえんすよ。
なんかねぇ、カネと利権の臭いがして不味い、ってな客が多いもんで…。

あ、お勘定ですか。ええ、ウチは金でも銀でも銅でも、
そうじゃなくても大歓迎ですぜ。

まいどあり!
またおいでつかぁさい。