花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ハートロッカー

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新宿武蔵野館にて。
アカデミー賞を受賞したこともあって、満席だった。
ハートロッカー(The Hurt Locker)とは「棺桶」を意味し、
行きたくないところの意味があるらしい。

作品の流れも、任務完了(除隊)まで、あと何日、
というカウントダウンになっていた。

2004年のイラク戦争の中での、爆発物処理班について扱った映画。
無差別爆破テロ・自爆テロなどの恐怖と戦いながら、
かつ、精神的疲労や徒労のなか、何とか生き延びたいという欲望をズシリ、と描いている。
実際、爆発物処理のシーンは、エンターテイメント性から離れた悲愴感もある。

戦争モノといえば、TVシリーズ「コンバット」という映画があった。
ビック・モローだったか?率いるアメリカ軍が、ドイツ軍をバッタバッタと倒して行く。
その後、シルベスター・スタローンのような派手なドンパチもあったが、
底流には、「勧善懲悪」が流れていた。
それは、アメリカ人が世界に冠たる存在としてのナラティブでもあった。

しかし、今回の映画は、善悪の判断がない、というよりも
判断が出来ないくらいの暴力と破壊、そして死の恐怖があった。
その意味で、「ディア・ハンター」や「プラトーン」と同じ類にも思えたが、
それとも一線を画すようだ。

恐らく、目に見えない敵(携帯を使った爆発テロ)や
殺戮(TVゲームのようなピンポイント爆撃)が、
「人間」対「人間」という図式ではなく、
「人間」対「機械を操る人間」という形に変化したといえよう。
顔の見えない相手と戦うほど、酷なものはない。

理性と本能(防衛本能)が交差し、極限まで追い込まれる。
時として生まれる狂気にどう抗うのか。
人間としての存在意識も問うているような気がする反面、
依存的な人の性(さが)の恐さも感じた映画だった。