花鳥風月記

流れる水に文字を書く

愚短想 番外編 大坊珈琲店@表参道

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表参道の駅近くにコーヒーの美味い店がある、と
前々から耳に入っていたので、行って見る。
もう少し、大きい店と思ったが、意外にも雑居ビルの2階の
こじんまりとした感じだった。それはそれで良い。

店主が、時間が空くたびに、豆をハンドピックしていた。
濃いめの、ということで、30g、100ccのコーヒーを注文。700円。
筒に結構多めに挽いた粉をハンドドリップに入れ、
先を切って細くしたであろうポットから、そーっと淹れる。
細い糸のように中心から外周に向けそろりそろりと淹れる。
最初の十秒は、ドリップ一杯に湯が馴染む感じ。
そこからそろそろとコーヒーが滴(したた)る。
もうちょい行けそう、と思った瞬間に、このドリップの使命は終わり、
受けたミルクポットから温めたカップに注がれる。
先ずは、もう、視覚から「美味い」を意識していた。
実際に飲むと、濃く・苦く、そして美味い。
なんかのCMじゃないが「贅沢だ」と思った。

ちなみに、淹れるシーンを写真に撮っていいか、と聞いたら、断られた。
勢い、店内やカップの写真は撮らなかった。

その後、きっと青学の先生だろうと思しき人が入ってきたが、
ノートパソコンを開けた途端に、店主から注意されていた。
ここはきっと茶道ならぬ「珈琲道」があるのだな、と思った。

季節的にも清々しく、開けた窓からは少し傾いた陽光が入り、
決して高級ではない、カウンターの木板を照らしていた。

ふと見上げると、文庫本がカウンター上に並んでいた。
昔はきっとこれを読んだ人がいたのかなあ、と。
しかし今は、紫煙に燻(いぶ)されて、茶褐色と化していた。
少し触れてもひっついて動かなかった。
岩手の本が何冊かあり、聞いてみたら、店主の大坊氏が岩手出身とのこと。
何気に、面白い店だなあ、と思った。