花鳥風月記

流れる水に文字を書く

春との旅

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

丸の内TOEIにて。
内容に関係なく気付いたこと。
「映画泥棒」が変わっていた。
6月1日で衣替え、といったところか…。

ストーリーは、北海道のニシンを待ち続けた祖父・忠男(仲代達矢)と暮らす
孫娘の春が、小学校の給食調理の仕事を廃校によって失い、
東京に出たい、という口論から、忠男が家を飛び出し、
家族のつてを頼って、北海道・東北を回るロード・ムービー。

久々に合う家族は、最初は表面的で冷たい。
しかし、その軋轢から見えるものは、小さい頃からずっといた
ある種の「愛情」とも受け止められる。
そして、各々の家族に取り巻く「悲哀」も、より空気を澄ませる。

窓を開ける習慣に微笑む孫娘の春だが、
特に長男の重男(大滝秀治)とのシーンに思うところがあった。
このシーンは外から望遠で撮っている。
かつてどこかで聞いた話だが、黒澤明監督の「七人の侍」での
殺陣のシーンは望遠で撮られていた、とのことだった。
過分に長い刀を振り回す三船敏郎の表情の動きというか「震え」が
迫真の演技を呼んだ、とのこと。
監督も役者もそういった先達から学んだことを生かしているような、
きっと日本映画の「全て」をぶつけているようなそんな好戦的な企図が
あったようにも思える。

映画の展開と同じく撮影していく「順撮り」という方法が採られたようだが、
確かに作り手も観る側も一緒になって感を高めた印象があった。

人生の悲哀、といってしまうと簡単だが、そんな不安と寂しさを、
それが故の「やさしさ」に触れると、込み上げる思いがあるのだなあ、と感じた。
年齢層の高い観客が多かったが、皆さん、泣いてました。
久々の邦画の良品に恵まれた。