花鳥風月記

流れる水に文字を書く

神野直彦 『「分かち合い」の経済学』

イメージ 1

この本を読みきるのに3ヶ月かかった。
この夏が暑かった、ということも理由でもあるが、
なぜか読み進められなかった。

今の日本経済を過去から、
または海外、特にスウェーデンの「オムソーリ」という
分かち合いの概念を参照しながら論じている。

確かに示唆に富む。
しかし、大学生(もしくはこれから大学生)向けに書かれているためか、
やや説明が冗長すぎたか…。

確かに発想も良い。
しかし、それが一体「現実社会」に対して
特に日本で、どのような形で現れるのか
分からなかった。

かつて物事は「思想→運動→体制」という形で現れる、と
渓内謙か、和田春樹の本で見たことがある。
りっぱな思想が、どうみても「運動」にも「体制」にも
つながっていないのが、気になった。
勿論、著者個人の事情(病状?)によるものもあると思うが、
官僚や政治家を輩出する東大の教授であって、
政府諮問機関(審査機関?)に席をならべ、
あとがきに原口云々、総務相の名前がでるなら、
なおさら、ここで書かれていることが、
社会のうねりになっていて、しかるべきではないのか?
そんなことを考えていた。

腑に落ちない、ということを悶々としていながら、ふと浮かんだ。
「仙人は、街角にいない」