花鳥風月記

流れる水に文字を書く

玄田有史 『希望のつくり方』

イメージ 1

岩波新書。2010年10月刊。

新しい分野でもある「希望学」について、分かりやすく書かれている。
現在の若者にふりかかる、ニートや格差の問題を起点に、
元気を出す「処方箋」を示している。

先ずは、多くは触れてはいないものの、ニートや格差の問題を、
世代間の問題として抽出。
若者を批判する中高年層が、実はその保身によって
マッチポンプ」を引き起こしていることをサラッと書いている。
そのサラッというのが、やや勿体ない。

希望と夢、希望と安全、宗教における希望の位置づけなど概念的な記述のあと、
実証的なデータを、読み手が飽きないように、簡単に紹介。
確かに文中に数字が羅列すると、読みにくくなる。
縦書きのため、数字が漢数字であることも、読みにくさがあったが、
そこは「慣れ」が必要であろう。
そして、釜石市を含めたフィールドワーク(実地調査)を進めている。
現地で知り合う人の中から、珠玉のような言葉をもらい、記録する。
高齢化社会がいち早く進む日本においては、
先人・先達の知恵が、苦境を乗り切るきっかけになるのではないか。
また、地域の活性、若者が安心して仕事をし、家族を構成するための
社会政策の方向性を模索する。

社会科学の叡智を探り、人と会う。そして、人と話す。
文献や数字に囚われない、オーラル・ヒストリーや
オーラル・フィールドワークが、必要とされていて、
そこを精力的に行っている、という印象を受けた。