花鳥風月記

流れる水に文字を書く

伊坂幸太郎 『3652』

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正月休みを利用して読んだ。
伊坂の初エッセイ集。
10年分(3652日分)の集大成。
もともと、エッセイを不得手としているとのことで、
丁寧な脚注や、自虐・諧謔なども入れて構成されている。

読むと、彼の穏やかそうな(気の小さい?)
性格が滲み出ていて、微笑ましい。
また、彼の渉猟してきた軌跡も分かり、
ある意味「伊坂幸太郎の成分表」といった感じもある。
ここで紹介された著書を読んでみたくなる。

このエッセイの中で印象的だったのが、「強度」という言葉だった。
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小説や映画、音楽やマンガには強度があると思う。普遍性や賞味期限というのとはま
た別で、何十年後も今と変わらず(もしくは今以上に)力を発する強さ、というものが。
(本書136ページ)
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本を単に「読み終えた」ということではない、「後味」を味わう感覚かなあ、とも思った。

また、ある種の「職業観」のような箇所もあり、
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確かに言われてみれば、嫌々ながらも使命感を持って続けることが家業なのかもしれ
ない。好きではじめた仕事は、嫌いになったとたんに終わるけれど、嫌々がベースにあ
るのならこれはなかなか終わらない。
(本書173ページ)
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何というか、こういうのをべルーフ(天職)とでもいうのではないか、と感じた。

確かに、洗練された、という印象はないものの、ファンにとっては
楽しい内容であったと思う。