花鳥風月記

流れる水に文字を書く

梨木香歩 『ピスタチオ』

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初めて読んでみた。

主人公山本翠、(本文ではペンネーム「棚」の方が多用される)というライターが、
日常の中に潜んでいた自然に対する様々な違和感が
アフリカのウガンダに取材旅行を行き、
片山海里という一人の研究者を追うことによって、
その奇妙な「予定調和」に翻弄されつつも、
次第に自分の持つなにがしかの運命と縁(えにし)に触れてゆき、
新たな文学作品へのモチーフへつながってゆく。

アフリカの持つ、呪詛的な側面に触れつつ、
自然と人間の関係を豊饒な構想で描いている。
読み手にどれだけの共感や関心が得られるものか、
と思いつつも、ロードムービー的な場面展開や、
人間の意識に潜む「超常現象」的な好奇心を
巧みに刺激している。

場面や、登場人物の「結末」を書いているわけではない。
どちらかというと、キャラを投げっぱなし、という気もしないでもないが、
現実の話で出てきたピスタチオと、
棚が書き上げた「ピスタチオ」が
絶妙なシンクロを伴って、大団円を仕立て上げた。

今までに読んだことのない、興味津々な作風だった。
そのため、先日、高田馬場BIG BOXの古本セールの際、
梨木香歩の本を8冊、「大人買い」した。(笑)