花鳥風月記

流れる水に文字を書く

河内孝 金平茂紀 『報道再生―グーグルとメディア崩壊』

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角川oneテーマ21新書。
テレビ報道の一線に立ってきた金平氏
新聞記者から、メディア研究者の側面も備えるジャーナリスト河内氏の共著本。

いずれも、アメリカ発のジャーナリズムの危機と転機について
それぞれの立場から論じている。

来たるべき時代のメディアとジャーナリズムの関係は、決して明るくはない。
そう、ジャーナリズムの現場にいる人にとって。
メインストリームとしての新聞・テレビの役割が低下し、
グーグルなど、インターネット・メディアにとってかわられる。
平氏の文章によれば、新聞・テレビの「コンテンツ・エコノミー」と
グーグルやハンフィントン・ポストなどのオンライン上のサイトを
「リンク・エコノミー」と称している。
今や「リンク・エコノミー」が大きくなり、「コンテンツ・エコノミー」は
旧来のものとして、姿を消す危険性をはらんでいる。

河内氏は、メディア研究の一環として、様々なメディアそのものの取材を通じて、
各メディア産業が持つ問題点を整理している。
最先端の職場環境と、再編を強いられる末端(新聞専売所)まで
幅広く知ることができた。

利用者―メディアの世界は、「読者」「視聴者」となるが、ネットでは「ユーザー」となる、
残念ながら、この指摘はなかった―の立場はどうなるのか。
新しい情報化社会は、市民社会にとってプラスになるのか…。

技術革新が持つ危険性―スマートフォンは、立ってる・座っているところまで、
その人物の行動を知ることができる!―ということに驚愕しつつも、
最新の「ついていけない」話題まで、きっちりと知ることができたのは良かった。
きわめて時事的なテーマでありつつも、そこに潜む問題は、
少し前から遡って、丁寧に論じている。
というより、特に金平氏は、正直な感想が並んでいる。
現場での頑張りも伺えるが、金平さん、ややしょぼくれているなあ、と…。
ここ10年の出来事が結構大きいんだろうなあ、と。

対照的に河内氏は、精力的に自分のフィールドを作り
渡り歩いているように思えた。
下世話な話かもしれないが、
プロフィールなどを見ると、かなりの世渡り上手に思えた。

メディアの世界も、アメリカ資本主義のような
大きい企業が、世界を牛耳りそうな印象を持つが、
同時に世界に撹拌する市民レベルのネットに広がりも侮れない。
旧来のメディアとの関係や、今後の社会について
考える題材を提供し、考えるには最適な一冊と思えた。
しかし、スマートフォンの買い替え、迷うなあ…。