花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景・再び (34)

その理由


人間の欲望は様々あるが、「学歴」というのは、
現代日本において、非常に根深いものであるなあ、とつくづく感じた。

インターネット掲示板「ヤフーみんなの知恵袋」を使って、
京都大・同志社大・早稲田大・立教大などの入試問題を投稿し、
不正行為を働いた浪人生が偽計業務妨害の容疑で逮捕された。

動機や方法はこれから明らかになるだろう。
また、ネット社会を利用したこういった事件については、
その本人の素性も晒される危険も孕んでいる。
「自業自得」といえば、それまでかもしれないが、
そんな中でも、前回の文章にも触れた、
「匿名性」はいとも簡単に剥がされてしまう
不穏な力に脅威を覚える。

事件が事件だからかもしれないが、
ヤフーもNTTドコモも、「任意」でデータを提出している。

連日のマスコミ報道で、気になったのが、
その劇場的な展開にある。
「発覚しました」→「見つかりました」→「逮捕しました」という
3段階もあれば、ことが足りるニュースを
少しずつスライスして、情報を小出しにして、妙な盛り上がりを見せた。
それは、「不正行為」という勧善懲悪的な設定も相俟って、
半ばヒステリーに近いものを感じる。

なぜか。理由は現代日本の「欲」に根差しているからではないだろうか。
学歴社会という大木の幹を蹴とばした反動ではなかろうか。
「これで収まってるんだ」という、吐き捨てるような社会の論理に
すがるように合わせてゆく。それが「学歴社会」であって、
人によっては、寸暇を惜しんで、すべてを犠牲にしながらでも勉強する。
そしてある種の「勝者」には、その優位性なり特権が付与されて(と思われている)、
そういったグループに入る。たとえるなら、大木に芽生える葉っぱみたいなもの。

だからこそ、そんな中で起こった騒動は、大きく騒がれる。
大きな木であればあるほど、振動で揺れる葉の数は多く、音も大きい。
大木の下の方の一番うるさい葉っぱが実はマスコミで働く人たちである。

だからうるさい。


第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を
      与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由が
      なければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及び
      その弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。