花鳥風月記

流れる水に文字を書く

固形メディア論 002

「固形メディア」個人史その1

音楽というものが、持ち運べるという
最初の思い出は、8トラックだった。
今では知らない人も多いかもしれない。

カセットテープの前身のようなもので、
子どもの頃の記憶ながら、新書本より一回りか二回りくらい
大きかったと思う。

当時、父親が運転する自動車についていた。
当時の自動車には、硬いプラスティックのボタンを押すと、
水平のインジケーターに水平に動く縦のメモリがあって
ラジオのチューニングになっていた。
8トラックは、いわばカーステレオのはしりのようなものだった。

記憶では、確か演歌をかけ、それに合わせ、
歌いながら父親がハンドルを握っていたと思う。
しかし、当時のものは、カセットもプレーヤーも
耐久性が低かったようで、音のひずみやかすれが度々生じ、
そのたびに大き目の綿棒でヘッドを磨いていたような気がする。

おそらくもっと前には、オープンリールのカセットなどもあったのだろうが、
個人史的なことでは、この8トラックがすべての始まりのようで、
それを使った、「カラオケ」が始まった。

後に、当たり前と思われるこの娯楽は、
大きなカセットをガッコン、と入れるところから
始まったのである。