花鳥風月記

流れる水に文字を書く

蜂蜜

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銀座テアトルシネマにて。
何の前知識なしに行く。

第60回ベルリン国際映画祭金熊賞を獲ったとのこと。
やや年配のご婦人がたが多かった。

この映画はユスフという詩人を扱った3部作の3作目にあたる。
不思議なことに、3部作の時系列は逆行している。
作者の観点は、その人物の本質を辿って行く、とのこと。
「卵」「ミルク」「蜂蜜」というタイトルからは、
ケーキの材料とも生活に必要な一コマとも受け止められなくもない。
きっと、暗喩的に映画の中で挿入されているものなのだろう。

「蜂蜜」はユスフの少年時代を扱った内容。
黒蜂蜜を獲る養蜂家の父と、母との3人暮らし。
読み書きが勉強の少年ユスフは、人前ではどもってしまう。
ただ、父親との関係は濃く、仕事をする父への憧憬もあったのだろう。

ある時、父親が遠くへ蜂蜜を獲りに行って戻らなかった。
鬱蒼とした森の中で暮らす人々は、探す術を持たない。
祭りの会場に居やしないかと探す母親。
やがて時が経つにつれ、悲嘆にくれる日々が来る。
母親を励まそうと、いつもは嫌うミルクを飲み下して…。
学校では、どもりながら読む姿に、先生が褒美のバッチを渡す。
生活の一コマ一コマの中に美しい風景があり、
そのナラティブ(文体)が一編の詩のような世界観がある。
どことなくパンフレットに出てきそうな文面だが、
確かに、森の緑に、樹木の突き上げる直線と、山道を映すアングルが絵画に近い。

静かな映画というと、過去に見た「眠る男」「ジャック・ドゥミの少年期?」「殯の森
のような映画が連想される。
「家族」や「森」がどことなく共通項で、自然美に委ねる人間の小ささと
自然の恵みを浴する幸せが綴られている、と感じる。
ま、途中で何回か落ちそうになったが…。(笑)