花鳥風月記

流れる水に文字を書く

BIUTIFUL ビューティフル

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TOHOシネマズ・シャンテ(昔のシャンテ・シネ)にて。
ノーカントリー」で有名なハビエル・バルデム主演、
「バベル」のイニャリトゥが監督。

スペイン・バルセロナは、ガウディの建築が有名だが、
移民の街としても有名らしい。
時に場所が分からなくなるくらいに、中国やアフリカの風景がそこにある。
いずれも出稼ぎとして不法入国し、違法でかつ危険な就労をし、
警察に捕まったら、強制送還を余儀なくされる。

ウスバル(バルデム)は、その中で、非合法な仕事もしつつ、
2人の子どもを抱えて日々の生活を営む。
ときに精神を病んだ妻もいる。

そのウスバルに前立腺癌で余命2ヶ月、と告知される。
そこから彼の「死に仕度」が始まった。
時と社会は非情で、一緒に働いていたアフリカ人は警察に捕まり、
中国人は、自ら与えた暖房器具で一酸化炭素中毒を起こし事故死してしまう。

子どもにおカネを残したい思い、
強制送還で離ればなれになるアフリカ人家族、
安い暖房器具にしてしまった罪悪感、
そんなつらい思いが、彼の身体を病魔とともに切り刻んでいく。

強制送還で離ればなれになったイへに住む場所を与え、
後に子供の面倒をみることを懇願する。
そこで自分が死んだあとのおカネを預ける。
「飢えたものほど怖いものはない」という言葉のとおり、
イへは、故国セネガルに出奔する。

あらゆることが薄情に過ぎていきつつ、それが、
スペインの中でも特に美しいとされるバルセロナ
日常である、というある種の「鎮魂歌」のような作品だった。

作品のこだわりで、キャストはギリギリまで選考したらしい。
確かに一人ひとりが、はまり役だった。

スペイン語は、読んだように書けばいい、ということで
「BIUTIFUL」という言葉だったが、
冷蔵庫に貼ってあったピレネーの絵に描いてあった
「BIUTIFUL」が実際に会わずに死んだウスバルの父親との
心象風景にも繋がっているような気がした。