花鳥風月記

流れる水に文字を書く

藻谷浩介 『デフレの正体』

イメージ 1

角川One テーマ21新書。
本のタイトルは、恐らく編集サイドでつくられるものと推察するが、
「デフレ」という言葉でまとめるのは、勿体ないと思った。
それが、主として経済の専門家であろう人々の批判が生じ、
意味のない消耗戦となっているのだろう、と感じた。

戦後最長の好景気と言われながらも、
一向に庶民(あえて庶民)の生活は楽にならず、
むしろ一層苦しくなっていることを、
既存の経済理論ではなく、誰もが見られるデータを用いて
分かりやすく説明している。

読めば納得、ということが多いからこそ、
タイトルのとっつきにくさに反し、売れている。
筆者は、政府系金融機関に勤めつつ、
全国の市町村を回って、経済の実態を見て回る、
まさに「眼と耳と足を使った」論を用いている。

そして、この不安定な経済情勢の正体が、
生産年齢人口の減少という、人口の動態分析から導き出している。
その論は、非常に分かりやすく、また、政府や専門家が提示する
経済政策がいかに理にかなわないことかが、つぶさに分かる。

そして、この論が、藻谷氏自身が、オリジナルでなく、
誰かが気づいていてもおかしくはない、ということから、
恐らく、大きな力というか存在によって、表に出ない
様々な「真っ当な意見」を暗に伝えようとしているのかもしれない。

そこには、多くの官僚やエリートなどの「お受験」で評価され、
何の考えも努力もしない存在に対する怒りもあるように思えた。
動画で見た著者は、いささか神経質そうで短気な印象を持ったが、
恐らく、論をなさない批判や非難を散々受けていて、
受容体が小さくなっているのかなあ、と感じた。
あと、本を読んだとき、思い込みが激しい印象も持った。