花鳥風月記

流れる水に文字を書く

山崎ナオコーラ 『ニキの屈辱』

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久しぶりに山崎ナオコーラの本を読む。

社会的に見られる「オトナ」に対して抵抗感を感じながらも、
生まれ育った環境の中で、「大人しく」いきる作法を身につけた
加々美和臣が、写真家になるべく、憧憬の対象であった
1歳下で、すでに名の売れた村岡ニキのアシスタントをつとめることで
始まった、微熱感漂う恋愛モノ。

二人の濃密であるようで、距離がある感覚というのを、
じつにサラッと書き綴っている。
読み手には、不要な疲労感を求めないところが
「山崎らしさ」を感じる。

村岡ニキは、評価と噂に対し、自己嫌悪に苛(さいな)まれながら
加々美にだけ、自分の姿を晒していく。
加々美は、憧憬と服従を織り交ぜながら、それを包み込む努力をする。

やがて、二人に距離ができたところで、加々美の才能が開花して…
という想定通りの展開になる。

これも映画になりそうな気がした。
村岡ニキは、イメージとしては「いきものがかり」の吉岡聖恵だなあ、と…。