花鳥風月記

流れる水に文字を書く

古市憲寿 「絶望の国の幸福な若者たち」

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27歳(執筆当時は26歳)の若い社会学者の若者論。
非常に挑戦的で、挑発的な文章に爽快感と不快感、どちらを覚えるか。
小難しい言葉を使わずに、最近の言葉で、ウィットと皮肉に富んで書いてある。

タイトルからも分かるとおり、現代日本を取りまく様々な問題点
政治の逼迫感・不景気・世代格差の中で、若者が「生きづらい」とされるが、
本書では、様々なデータを見ながら、けっして「不幸」とは感じているのではなく、
むしろ「そこそこ幸せ」という心理的な要因を見て行こう、という本だ。

研究者だが、研究書という感じではなく、読みやすい。
しかし、気になる点もいくつも感じることがある。

まず、数値の認識の方法に課題があるように思える。
彼が示すデータ・根拠論拠は、「誰でも入手できる」ものと
「フィールドワーク」と称した若者との会話による。
(その会話も何人かの「友達?」を誘っているようだ)
マス・データとパーソナルなものの次元の違いが大きすぎて
本当に若者が形容できているのか気になった。
デモの現場や、ワールドカップに沸く渋谷を歩いたというが
フィールドワークであるようだ。
他もたくさんやっているのかどうかが分からないが、
ちょっとその辺が「弱い」かな、と感じた。

もう一点は、理論が先行している感じもある。
様々な研究書を渉猟しているようだが、
それがどういったきっかけで知るようになったのかが分からない。
(勿論、研究のために文献があるのだから、いちいち説明責任はないのかもしれないが)

それから(この辺でとどめておくが)、筆者の覚悟だろうか。
社会と格闘、というよりスマートに論じるということに重きがあるようだ。
それは人それぞれだから、どうこういうことはないのかもしれないが、
きっと目の前に来た事実や「力(または暴力)」にどう向き合うのだろう。
ま、そこまで問うのは酷か、お門違いと思われるかもしれないが…。

しかし、本来ならば、こういった本をルポルタージュとして出す
ジャーナリストがいてしかるべき、と感じた。