花鳥風月記

流れる水に文字を書く

アーティスト

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銀座のシネスイッチにて。
アカデミー賞にも選ばれた現代版のサイレント映画
サイレントであるため、画像もモノクロになっている。
しかし単なる白黒ではなく、カラーで撮ってのモノクロ変換らしく、
肌のつやが艶めかしい。どころなく銀塩のモノクロ写真の細やかさにも通じる。

この映画を観る人の中で、サイレント映画に縁がある人は限られる。
あってもチャップリンの映画が接点か。

しかしどことなく、ストーリーを追うプロセスにおいて
既視感を覚えずにはいられなかった。
それはある意味で、昔から綴られてきたストーリーを思い出すかのように…。

サイレント映画で名を馳せた俳優ジョージ・バレンティン
やがてトーキーの時代に淘汰されてしまう。
私は「芸術家(アーティスト)だ」という言葉を吐き、
自ら制作にあたったサイレント映画は大コケし、
世界恐慌もあり、破産の憂き目にあう。

その俳優ひそかに思いを寄せていたペピー・ミラーは、
彼がアドバイスしてくれた「付けぼくろ」がチャームポイントとなって
一躍トーキー映画のヒロインとなる。
身を興すもの、やつすもの。その交差の中で繰り広げられる
優しさとプライド、そして葛藤が、言葉のない世界で満ち満ちてくる。

ハラハラ・ドキドキというものも、サイレント映画ゆえの
ハッピーエンドを期待できる展開に安心しつつ、見ることができた。
しかし、ラストのタップダンスは、「そこにあったか!」というような
目を見張るものだった。
まさにエンターテイメントにおける大団円はそこにあった。
そして、最後に渋い声で「With pleasure(喜んで)」という
主人公の言葉が初めて画面から流れた。

フランス映画でありながら、アメリカ映画のような簡明な楽しさがあった。