花鳥風月記

流れる水に文字を書く

キリマンジャロの雪

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神保町の岩波ホールにて。
南仏マルセイユで、造船業を生業とする工場労働者の中で、
20名の希望退職をクジで募った。
その中で、労働組合の委員長の主人公ミシェルも
メンバーから外せる特権を無視してしまったため、
そのメンバーに入ってしまうことになった。

プライドを守るために、職場を去ったが、
無聊をかこつ日々を送る。
やがて結婚30周年を祝う会があり、
その席にリストラをした仲間も呼んだ。
記念日のプレゼントは、キリマンジャロへの旅行券とおカネ。
その時は、ミシェルと妻マリ=クレールは幸せそのものだった。

しかし、幸せな日々を壊すように、強盗が押し入る。
やがて、その犯人が短いながらも同じ職場で働いた青年とわかりショックを受ける。
彼の家庭環境も複雑で、犯行にも彼らなりに(正当化はできないが)理由がある。
ミシェルとマリ=クレールは、悔悛の情すら現れない、青年の姿にショックを受けた。
それは彼ら夫婦が長年築き上げてきたものに対しての挑発にも思えた。

人はどれだけ強くなれるか、そして優しくなれるか。

最後は、その強さ・優しさが画面からにじみ出て、観衆の涙腺を刺激する。
キリマンジャロの雪」とは、単なるシャンソンの曲名だが、
その物悲しいメロディは、穏やかな映像の中で心地よくたゆたうようであった。

フランス映画の奥深さを感じた作品だった。