花鳥風月記

流れる水に文字を書く

池内了 『科学と人間の不協和音』

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角川oneテーマ21新書。
以前、岩波新書の『疑似科学論』でも関心を持って読んだ。

今回は、東日本大震災や福島の原発事故もあって、
科学の「負の歴史」特に現代史に焦点をあてて書いている。

日本において科学は「科学技術」という位置づけであり、
「技術」に重きを置いている。
それは欧米の「科学」重視とは異にしていた。
それは日本の近代からの発展の歴史を繙くとうなづける。

宗教的・哲学的な「真理」にも通じる科学の研究は、
やがて経済的な側面が重視され、研究のフィールドは、
今や国家や大学などの公共機関ではなく、企業競争に移り、
現在では「産学官共同」という怪しいおカネの流れにまでなっている。

その流れの中で、原発の閉鎖性(ムラ社会的な)というのも生まれてきた。

文章は平易であるものの、内容が充実している。
そして語るべきをズバッと言っている。
これぞ「科学者の矜恃」というものではないだろうか…。