花鳥風月記

流れる水に文字を書く

「選挙2」

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渋谷のシアター・イメージフォーラムにて。
日曜日の仕事の後、最終回に間に合う。
夕立の豪雨もあって、比較的ゆったりと映画を観ることができた。

前作「選挙」のときのラジオ体操から始まるオープニングが、いまだ記憶に残る。
あの時は、川崎市議会議員の補選に立候補した山内和彦(山さん)が
まさに一挙手一投足が決められた枠の中に合わせるという
奇妙で滑稽な日本の選挙の姿が浮き彫りとなったが、
今回は、山さんの眼からみた選挙と同時に、
2011年4月、東日本大震災からわずかひと月という
「空気」も併せて浮かび上がっていた。

後にトークショーで想田監督が話していたが、
当時の撮影したものを見たときに感じた違和感が、
NYから見える日本の姿
震災・原発の危機があったにもかかわらず、
1年ちょっとの後に原発を推進していた自民党が圧勝する
という違和感とシンクロしたそうである。

今回の山さんの立候補は、わずか4日ほどで決め、
従来の手法に囚われない、ポスター・選挙公報・はがきという
約8万円の費用で選挙を戦った。
いや、戦ったというより、山さんも極めて秀逸な「観察眼」を持って
選挙区内を軽自動車で回った。

何もしないという「観察ごろし」に想田監督も苦慮したと思うが、
その分、他の候補者と山さんの解説を知ることで、選挙の実態・実情が分かった。

一部の自民党候補者が、撮影に関していちゃもんをつけていたが、
ひるまず撮影を続けていた。これは今危機にある、憲法第21条に通じるものがある。

最終日、駅前で山さんの演説が始まる。すでに他の候補者が美味しい場所や時間を
選挙ならぬ「占拠」をしていたが、それに腐することなく、
反対側の人通りの少ない場所で、声は荒げず、訥々と話す。

聴く人が少ない、その話は、決して流暢ではないものの、
かつて見たチャップリンの「独裁者」のラストシーンを彷彿とさせた。

政治的であることに何のためらいもない。
しかし、政治的であるその言動は「私に一票」ではなく、「選挙に行こう」である。
海外で評価が高くなることは、間違いなかろう。
しかし、それだけでは、勿体ない。

今、選挙に向かう、多くの人に見てもらいたい作品だと思った。