花鳥風月記

流れる水に文字を書く

パッチギ LOVE&PEACE

シリーズ2作目。1作目の「青春群像」っぽいところから一転、
テーマが「生きることの大切さ」という重みの加わった内容になった。
続編ということだったが、前作との関連性はストーリー上であって、配役ではない。
在日社会ではきっと今までも語られていた内容が映像になっているのではないかと思う。
いわれのない差別を、逃れられない運命を、吐き出しきれない悔しさを、
エンターテイメントという手法を使い、観る者に突きつける、というよりも
きちんと目の前に置くという印象を受ける。また、父親の世代の苦難を
重厚な映像として表現することで、戦争映画、「死にに行く」ことを美化するような
風潮にパッチギしている。皮肉にも、今、そんな映画も封切られている。
映画人としても井筒監督はパッチギしたいこともあったのではないか。
戦争映画をつくると簡単にスポンサーが付く。また、スポンサーがいるから
安易に作りやすいという日本映画の貧弱さ。前作のまれに見る成功をもとに
一生懸命お金を集め、お金を使って、この映画を作り上げた感じがする。
エンターテイメントのセンスとしては、『ガキ帝国』以来、決してセンスが良いとは
思わないが、不思議に監督の表情や人情(時には激情)に観る者が惹かれていくのだと思う。
いろいろな問題を「先ずは見ていこうや」ということでは良作だと思う。