花鳥風月記

流れる水に文字を書く

『郊外の社会学 ―現代を生きる形』 若林幹夫

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都市と郊外について、それが格差社会にも最近絡んでいるので、
郊外論についての本を探して、この本を読む。
概論としての位置づけとしてはこの本は評価できるが、
いわゆる「読み物」という「新書」としての評価は今ひとつだった。
引用・重引が目立ち、眼で追って、すっきりしない。
専門分野の各論をなぞるのはいいが、結局この本のために著者がしたことは
つくばエクスプレスに乗って各駅(または主要な駅)を見て回っただけのような気がする。
テレビ東京・ぶらり各駅停車の旅」じゃないんだから、という突っ込みを入れたくなる。
かと思ったら、この本の最終ページに「研究成果の一部」と書かれており、
「あとがき」に書かれているような意気込みの割には、本文にその情熱が
反映されていないのが残念。勿論、郊外論の是非をバランス良く書くために、
文面の苦慮があったかもしれないが、それを差し引いても、もっと自身で論じて欲しかった気がする。
建築家やデザイナーの方が、わりとモノをはっきりと言う分だけ、それが目立った。
それは、現場の人間と研究者の立場の違いといえばそれまでかもしれない。
巻末の参考文献は大いに役立ちそうだ。
※ちなみに朝日新聞で書評も載っていたが、これも評者が何を評価しているのか分からなかった。