花鳥風月記

流れる水に文字を書く

クマグスの森展【南方熊楠】

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外苑前の近くのワタリウム美術館行く。
ここは初めて来たが、なかなか面白い作り(構造)をしている。
どことなく自分の職場を彷彿とさせるような空間設定だった。
職場では、打ちっぱなしのコンクリートには、テープ類の跡が残るのを
気をつけているのだが、ここでは、がっちりと残っている。

1階はショップになっているが、一つ一つが高かった。
地下は中1階にあたるところは12席くらいのカフェ
地下は、書籍が置いてあった。地下は吹き抜けなので、
天井まで書棚が続く。写真や芸術関係の書籍がメイン。

展示会は2月3日までの期間中、一度申し込めば、何度でも入れるシステム。
なかなか良いが、足繁く通える場所ではないのが少々残念。
入館時に運良くガイドの説明が入った。
確かにガイドの説明がないと並んでいる標本や資料の意味が分からない。
聞けてよかった。余談だが、ガイドの着ているシャツが厚手のコットンシャツで
いいなあ、と思った。(どうでもいいことだが…)

南方熊楠は、環境問題(エコロジー)に絡んで度々ブームになる。
しかし、その詳細は、今まで知らずに来た。
今回の展示から見えてきたものは、その類まれなる収集癖?と
貪欲の度が過ぎるくらいの博学・博識だった。
また、記録への執念もすさまじい。
13歳の頃に筆写をまとめた「動物学」の序文に、こう書かれていた。
「宇宙諸体森羅万象にして、これを見るにますます多く、これを求むれば、
いよいよ蕃(しげ)く、涯限(がいげん)あらざるなり」
要するに、知ろうと思うことがどんどん増えていって、果てがない、ということ。
13歳がこんなことが書けるのが驚きだ。

病による東大進学断念によって、19歳で渡米、キューバ・イギリスと渡り歩き、
33歳まで、外国で学んでいることだ。今では想像がつかない。

生涯を研究に費やし、その膨大な資料は、いま、この眼でみられることに感謝したい。
また、標本を包む新聞紙にも関心が向いた。
明治36年くらいの時事新報と大阪毎日新聞だが、
毎日には、「日刊」とは書かず「休み知らず」とあった。
こっちの方がインパクトがある。

しかし、今回の展示には、様々な分野に関心が高かったことも展示されている。
夢の分析や、医学・セクソロジーカニバリズム・神社合祀反対運動など、
南方熊楠のあらゆる人物側面を照らし出している。

生前、熊楠が使った硯も置かれていたが、真ん中が、異常にへこんでいる。
これは、墨のすり跡、とのことだが、それだけ、熱心であるという証左なのだろう。
よく、大英博物館だか図書館には、K・マルクスの勉強によってゆがんだ机がある、
と聞いたことがあったが、そういった傑物は、日本にもいた、ということだろう。

粘菌の培養や、映像ルームの作成など、
一つひとつが、色々と趣向を凝らしている。展示する側の努力も感じた。
但し、説明を聞かないと、自分で理解しながら見続けるのはキツイかな、と思った。