花鳥風月記

流れる水に文字を書く

日本国憲法百景 (43)

掛け算の常識と不思議

「マイナス1かけるマイナス1は1」
みんな、そう覚えているはずだが、
ではなぜそうなるかについては、
理解していない人も多い。

数直線で、距離や向きで説明する人がいる。
あるいはトランプを使って説明する人がいる。
いずれも「なるほど」とは思うものの、すっきりしない。

実は、2次方程式で計算することができる。
注:丸数字の②は「2乗」の意味です。
-1×(-1)
=(-1)②+0
=(-1)②+(1-1)
=(-1)②-1+1
=(-1+1)(-1-1)+1
=1

さて、この「マイナス1かけるマイナス1は1」を
国会・選挙、つまりは選挙民と政治家で考えてみよう。
どんなに聡明な選挙民がいたとしても、政治家がダメなら、全てがダメ。
どんなに優秀な政治家がいても、選挙民がだめなら、当選できずダメ。
「多数決」という原則は、多数派がダメならもともとダメ。
少数派がダメな場合は、起こす政治不安は世の常。
ということは、選挙民も、政治家も聡明で優秀であることが、
国権の「最高」機関として機能しえる必要条件となる。

つまりは、近代政治史というのは、
ひたすら、国権の「最低」機関としての
更新を繰り返してきた、ということにはなるまいか。
民主主義にいささか懐疑的な人は、
実はその点を衝いているのではないか。
(かつて西部邁の「死者の民主主義」という話を聞いたことがあるが、
きっと概ねのところで通底するだろう)

では、望むべき「最高」機関とは何か。
100×(-1)=-100であれば
-100×1=-100でもある。
つまりは
100×1=100、より政治家もそして選挙民も
「プラス」であり、「プラス」であり続けることが必要なのだろう。

では「マイナスかけるマイナス」とはどういう世界かを考えると、
例えば、核戦争にYESという人が掛け合わせれば、
世の中の一切が「浄化」される、ということなのだろう。
それはプラスであるようでいて、実は何も残らない。

第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。