花鳥風月記

流れる水に文字を書く

今森光彦写真展 「里山」

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東京駅の大丸ミュージアムにて。
日本の美しい原風景としての「里山」をモチーフとして、
長年、琵琶湖周辺の自然を撮り続けた写真家の展示。

かつてNHKの番組でも放映されたらしい。

人の営みが集約された場としての棚田。
山の稜線に沿うように貼り付き、
人々の暮らす家屋もまた、対の情景を創り出している。

朝日に光る田園は橙、黄昏は青、という色のコントラスト、
見上げるケヤキの葉の広がりは毛細血管のようでいて、
黒と薄い水色のなかで、なぜか本来の緑がアクセントとなっている。

深い緑は、陰(暗部)とのコントラストが美しい。
棚田の草刈りの場面では、より立体的に色が浮き立つ。

干し柿が吊るされる軒先は、思いもかけず、日本家屋が
その丸い陰によって洋館のようなイメージを生み出す。

また、水辺にはヨシ原をはじめとした、様々な動植物が息づき、
ハスの大輪は、どことなく深遠な雰囲気を醸し出す。

水辺の樹氷の場面は、そこが日本であることが俄かに信じがたかった。

日本の風景は、知っているようでいて、まだまだ知らない豊かな表情が沢山ある。
それは、近代文明がないがしろにしてきた、古く数百年前から営々と脈づいてきた
人々が生きてきた「証」にほかならない。