花鳥風月記

流れる水に文字を書く

荒木経惟 KOSHOKU PAINTING

イメージ 1

表参道のRAT HOLE GALLERYにて。

写真とペインティングの合作というのは、たまに見かける。
もっともペインティングは「絵」というより、写真の世界を
破断するというか分解するような役割のようだ。

写真そのもの自体は、光学的、または最近では電子的な
緻密かつ規則的に並べられた秩序のなかで表出される。
ある意味、無秩序を表現しようとしても、
整然としたコマンド(命令)の中から生まれてしまう。
それをラッダイト(打ち壊す)試みのような気がする。

荒木作品なので、猥雑な写真が並ぶ。
まあ、受け入れるには勇気が要りそうなものが多い。
ペインティングは暴力的ではある。
原色の塗料を刷毛にのせ、感じるままに、といった印象。
ただし、所々ラメが入っていたり、被写体の表情が見えるように、
手で塗料を拭いた形跡もある。バラバラなようでいても計算はあるらしい。
また、手を回して円形を描いた部分を辿ると、
荒木の背格好が容易に想像できる。

空の写真に「空」と書き込んでいるが、
「そらのなかにあながある」と言いたげな作品だった。
それを見たとき、学校の教科書にあった三好達治の詩のなかで、
「海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がいる。
そして母(mere)よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海(mer)がある。」
という言葉を思い出した。