花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ブリューゲル版画の世界 ベルギー王国図書館所蔵

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渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて。

15世紀からある図書館に所蔵された版画コレクションが公開された。
ピーテル・ブリューゲルの版画については、
「大きな魚は小さな魚を食う」はイマニュエル・ウォーラースティンの
本の表紙になっていた(北村肇の本にもあった)ことを思い出し、観に行った。

絵画でも、世界史の資料集か何かの表紙になっていたので、
縁のある画家なのかなあ、とも思った。

見る人を惹きつける魅力に一つに、「奇想さ」がある。
キャラクターがどことなく寓話的で、今風にいえばキモイ。
しかしながら、人間のどこか端っこで、共感をもってしまうような
際どさを形象しているような気がする。

そして数々の作品が、メッセージ性に富んでいる。
道徳的な視点もあり、一つの絵で、さまざまなことわざ・箴言といったものが
表現されている。

そして構図の素晴らしさ。
モノトーンの世界でありながら、遠近・明暗が素晴らしい。
そして、雪舟の「天橋立」のように、普通の視点では描けない様な
構図の版画を作っている。

版画なので決して大判でない紙に、大きく・広く(イカロスが堕ちるような構図も)
描き切れているのが、素晴らしい。
また、帆船の風をはらんでいるふくらみに躍動感も感じる。
宗教的な遠因もあろうが、人間の形象は瑞々しさよりも、
寓話的要素として、その枠を押し込められているが、
自然風景は、その枠を取り払った、瑞々しくも、艶もあるような印象を受けた。

図録は、2,500円と高かったので、買わなかった。
こういった展示会をみると、電子書籍に変わる、最後の砦のように思えた。
図録は、将来、電子書籍化に最もされやすい気がする。

展示会は2時間かけじっくりと見る。ボリュームがある。