花鳥風月記

流れる水に文字を書く

君を想って海をゆく

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有楽町イトシア4階のヒューマントラストシネマ有楽町にて。
水曜日のサービスデーを利用。
1,000円だったが、さほど混んでいなかった。

クルド難民の17歳の若者ビラルが、イギリスに渡った恋人に会うため、
イラクから、フランスのカレまで、3ヶ月かけて歩き、密航を図る。
試みは失敗し、彼は一縷の望みを託して、水泳を習い始める。

そこに、かつては水泳の有力選手として名を馳せたが、
今では離婚寸前で、無聊をかこつ男シモンがいた。

風が強く、水温10度のドーバー海峡を10時間泳ぐ。
常人では無理なことだが、シモンは、ビラルにウェットスーツを与え、
水泳の手ほどきをする。

カレの街は、移民に厳しく、むしろ排斥的である。
少しの支援・施しが、罪として咎められる。
そんな重い社会の空気が、劇中の灰色の雲が広がり、
雨の多い土地に住む人の足取りを重くする。

ロンドンに住む恋人からの知らせで、彼女の強制的な結婚が決まる。
彼女に会いたい一心で再び海に向かい、そして悲劇は起こる。

移民の問題を、2組の男女の交錯で見事に表現している。
守られている者は、どこまでも守られていて、
そうでないものは、とことんシバキ続けられる。
そんな厳しい現実も浮き彫りにしている。

ロマンチックな邦題に比して、原題は「WELCOME」
不法滞在者を泊めることを指弾する隣人の玄関マットに綴られていた。
ふと、沖縄の米軍基地入口にあった「WELCOME TO ABROAD」を思い出した。
「WELCOME」とは、かくも敷居の高い言葉であったのか…。