花鳥風月記

流れる水に文字を書く

エル・グレコ展

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上野の東京都美術館にて。
最初、国立博物館の「王羲之展」にしようと思っていたが、
気まぐれに行先を変えた。平日ということもあり、さほど混んでなかった。

スペインを代表する画家。
没後400年を記念して、とのこと。
ギリシャクレタ島で生まれ、ベネチア・ローマを経て、
スペインのトレドに根を下ろした人生。
肖像画で市井の評価を得、やがて建築家とともに
歴史的建造物をプロデュースすることになった。
略歴には、度重なる報酬に対しての訴訟があったことが記されていた。

その作風はどこか物悲しい、というか、
色に赤みや黄色味がない。
それは当時のかの地に生きる人々の「生きた色」なのか
宗教的な節制禁欲を意識したものなのか良く分からない。
しかし、時に大雑把に、時に繊細に描かれる線は、
光の明暗や、精密さが浮き立ち、作品にストーリーが生まれる。

圧巻なのは、最後に展示されていた「無原罪のお宿り」で、
聖母マリアが母アンナの胎内に入るその様を
ダイナミックに描いている。
そしてそこには、確かな技法が確立されていた。
展示点数は決して多くはなかったが、
それがかえって、作品の詳細が分かるように説明書きが
(子供向きのものもあって)、大いに役に立った。

そこからイメージできるエル・グレコは、
日本でも愛される、職員気質のおやじの姿にも見えた。

そういえば、館内展示の照明がちらついていた。
見づらかったので、係員に言ったら「あ、あの場所ですよね」と
別のところを言われた。ということは複数個所あるってことだ。
あの方々は、一体何を見ているのだろう…