花鳥風月記

流れる水に文字を書く

川合玉堂展

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恵比寿の山種美術館にて。
生誕140年を記念したもの。
美術館創立者の山﨑種二とも親交があり、
美術館に収蔵されるのは70点を超える。とのこと。

今回は、生涯を通じて時系列的に作品を展示している。
まず驚いたのが、絵を始めた10代から50代までを
ひとくくりにしていることだった。
こういう世界なら、ありえるのだろう…。

17歳くらいで描かれた写実的な動物模写に驚嘆する。

襖絵では、琳派を意識した「紅白梅」が鮮やかだった。
金地ということもあり、色褪せず、彩色された白梅・紅梅の対比と、
立体感のある枝の交差が見事だった。

「石楠花」の絵は、現代でいう一眼レフのような構図だった。
西洋絵画も取り入れ、「焚火」では、煙をよける少女の表情が、
日本画とは違うふくよかさが感じられた。

また、細長い掛け軸の絵であっても、
動線が見て取れる。
「水声雨声」という作品では、
縦に降る雨と、右から左斜めに流れる用水路、
それに逆行する人間の歩みが、
それぞれ違うスピードで展開される。
一枚の絵の中から、動きやスピードを感じられる
最も印象的な絵だった。

戦時下で、要請された戦争画については、
「荒海」という作品で抽象に徹した。
戦闘する様を描かない、という信念が感じられた。

自然を描くと同時に芯の強さが感じられた展示だった。