花鳥風月記

流れる水に文字を書く

愚短想(223) おもいで北千住

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渥美二郎の最大のヒット曲「夢追い酒」のシングルB面に
「おもいで北千住」という曲がある。
「ルン、ルルルン、」といったコーラスは、十二分にインパクトがあったのだが、
今ではどんな曲だったか忘れてしまった。
ただし、渥美二郎が昔、北千住で流しをしていたことが
この曲のモチーフになっているとか、どうとか…。

なかなか休みが取れない休日を使って散策してみた。
浅草から、東武線に乗る。電車が出た直後から、
東京スカイツリーが間近に迫る。
どうやら「業平橋」の名称がなくなるらしい…。

そうこうするうちに、北千住まで着いてしまった。
前々から「変わった」ことは知っていた。
もっとも、駅のホームも多くなっていたので、
出口から迷ってしまった…。

駅を出たら、別世界。
もう、ここはどこだ?の印象。
町田や松戸を思わせるようなコンコースがあった。
昔の風景に丁度フタをかぶせてしまったような感じだ。

ただ、そこから離れると、昔の風景がよみがえってきた。
少し先には、イトーヨカドー発祥の地がある。
そういえば「ハヤミズ」だったか「ハナミズ」だったか「ミドリヤ」だったか
そんな大きめなスーパーというか百貨店があったような…。

飲み屋街に足を進める。懐かしい風景がそこにありながらも、
流行の店もあるようだ。
「高校時代(!)」に何度かいった「キンコンカン」とかいう店は
見当たらなかった。(どうやら1997年ごろになくなっているようだ)
牡蠣が当たったと噂があった店は、まだ残っていたようである。

北千住は大学に入った頃、魚市場でアルバイトして、
5時半くらいにいつも降りていた。
朝4時半に起き、6時には着く。
主に雑用をやっていたが、当時の時給千円は、魅力だった。

朝は魚屋が、8時過ぎくらいからは、飲み屋さんが
魚を買い付けに来ていた。
みな、気さくな人たちで、たまに魚の見方を教えてくれた。
11時ごろには、仕事が終わり、事務所でご飯を食べさせてくれた。
帳簿つける机の少し先で、料理を作ってくれた。
どんぶりめしに山盛りになったご飯を腹一杯に詰め込む。
仲買人のオジサンが「若いんだから、おかわりしろよ」といっていたが、
とてもできなかった。
お店の若旦那さんにも、浅草あたりでご飯をごちそうになったりした。

夏休み、冬休み、春休みと続けた。
大学は春休みが長いので、ほとんど入った。
朝働いて、少し休んで、家庭教師のバイトもした。
当時は頑張っていたなあ、としみじみ。
そうして50万円稼いだが、それでも学費には数万円及ばなかった。

転居を機に、アルバイトを辞め、奨学金が貰えるようになったため、
その後は、塾講師のアルバイトをしながら、学費を工面した。

当時は、街歩きを楽しむ余裕はなかった。
久々に降り立ち、ちょっと寒い夕刻に、とぼとぼと歩を進めた。